法人を利用した税金・社会保険料の最適化戦略

■ STEP1 法人と個人の税率の仕組みを理解する
日本では個人の所得税は、収入が増えるほど税率が高くなる超過累進税率(5%~45%)です。

(出典)国税庁HP
一方、法人の税率は一定の税率です。
さらに資本金1億円以下の中小法人には、軽減税率が適用されます。

(出典)国税庁HP
■ STEP2 社会保険料を仕組みを理解する
一般的な個人と法人の社会保険料の違いと特徴は次の通りです。
- 個人・・健康保険料+国民年金保険料
- 法人の従業員・・健康保険料+国民年金保険料+厚生年金保険料
■ 健康保険料・・所得に連動
■ 国民年金保険料・・定額■ 厚生年金保険料・・所得に連動社会保険料は法人か個人のどちらかで支払えばよいことになっています。
つまり、法人側で社会保険に加入し、従業員(自分)の分を納めたのであれば、個人側ではもう納めなくてよいということです。
厚生年金保険は以下の事業所に関して、加入が強制されています。
- 法人事業所
- 常時5人以上の従業員を抱える個人事業所(一部業態を除く)
法人事業所は経営者しかいない場合でも、厚生年金保険に加入しなければなりません。
■ STEP3 税金・社会保険料の最適化戦略を理解する
この戦略は個人と法人を使い分けることによって税金・社会保険料を最適化するものです。
ポイントは次の通りです。
■ 社会保険料を法人側で払う
■ 所得を分散させる<全体のイメージ図>

社会保険料を法人側で払う
社会保険料は先に述べた通り、法人側で払えば個人側で払う必要がありません。
また、厚生年金保険は給与に連動しています。
これを利用して法人側では社会保険料が最も低く抑えられる給与を設定します。
具体的には東京都であれば、月額の給与を45,000円(年54万)で設定すれば、給与所得控除の範囲で、かつ、社会保険料も最低ラインに抑えることができます。

こうすることで今後、個人側でどれだけ所得がでても社会保険料を払う必要はなくなります。
所得を分散させる
社会保険料の問題は解決したら残るは税金です。
税金は所得に応じて増えていきますが、個人と法人で税率が異なります。
<個人の税率>

<法人の税率>

税金を最適化するには個人と法人に所得を分散させる必要があります。
まずは年間にかかる支出を把握します。
法人側の支出は一般的に次の通りです。
■ 事業にかかる支出
■ 給与■ 社会保険料■ 法人税の均等割■ 法人住民税■ 会計ソフトの利用料■ その他通信費など個人側の支出は一般的に次の通りです。
■ 事業にかかる支出
■ 青色申告特別控除■ 各種所得控除(医療費、社会保険料、小規模企業共済等掛金、寄付金、配偶者、扶養、基礎など)これらの支出から税率が最適化されるように、個人と法人に所得を分散させましょう。
※税金と社会保険料を最小化するシミュレーションはSTEP5で紹介しています。
青色申告特別控除と小規模企業共済については別記事で解説していますので、ぜひ参考にしてください。
この記事ではこんな悩みを解決できます■ 小規模企業共済って何?■ iDeCoって何■ それぞれのメリットやデメリットは?■ 結局どっちをやったらいいの? けーにゃん小規模企業共済やiDeCoのことを分かりやすく解説[…]
■ STEP4 法人を設立する
この戦略では法人を利用するので、法人を設立する必要があります。
法人の設立はひと昔前であれば、司法書士などに頼むというのが一般的でなかなか大変でした。
しかし、今ではネット上で会社設立の資料を作成することができます。
おすすめは必要な資料を無料で作成できるマネーフォワードです。
会社設立の初期費用
会社設立には初期費用がどうしてもかかります。
最低限用意しないといけない費用は次の通りです。
■ 電子定款作成手数料・・4,000円~5,000円
■ 電子定款認証・・52,000円■ 登録免許税・・150,000円■ 資本金の払い込み・・1円から■ STEP5 税金・社会保険料を「最小」にする所得をシミュレーション
最後は実際に税金と社会保険料を最小にする所得をシミュレーションしてみたいとおもいます。
税金と社会保険料を最小にするためには法人側で最少額の社会保険料を支払い、法人側と個人側で所得を残さない様にすることがポイントです。
<全体のイメージ図>

前提
- 東京都在住30歳
- フリーランス
- 法人側で動画編集、個人側でコンサル業務をおこなっている
- 配偶者有
- 小規模企業共済とiDeCoの積み立てを上限金額まで利用
法人の所得
社会保険料を最小にするため、給与を年間540,000円に設定します。
そうすると、社会保険料は年間130,867円となります。
次に税金を最小化するために残りの支出を計算します。
残りの支出は法人税の均等割、法人住民税、通信費などです。
以上を踏まえて、所得をゼロにするためには収入をおおよそ70~80万円となります。
そうすると、法人側の税金はゼロに近くなります。
個人の所得
社会保険料は法人側で払っているため、税金を最小化することだけを考えます。
支出は事業に係るものに加え、青色申告特別控除650,000円、社会保険料控除130,867円、小規模企業共済等掛金控除1,650,000円(小規模企業共済+iDeCo81)、配偶者控除380,000円、基礎控除480,000円などです。
以上を踏まえて、所得をゼロにするためには収入をおおよそ329万円+事業に係る支出となります。
これで、個人側の税金もゼロに近くなります。
所得が増えたらどうするのか
このシミュレーションは社会保険料と税金を最小にするものです。
そのため、収入を増やしたり、支出を減らせば所得が発生して納める税金が発生します。
納める税金は増えますが、手残りもあるので、所得は伸ばし続けた方がよいでしょう。
ポイントとしては所得が増えたら、法人側と個人側のどちらで所得を残すかを考えるのが大切です。
例えば、個人の所得が800万円であれば税率は23%です。
一方、法人の所得が800万円であれば税率は一般的には15%です。
このように、個人と法人で納める税金と手残りが変わるので、どちらに所得を残すかが重要になります。
結局、法人化のタイミングは?
個人の所得税・住民税の最高税率の合計は55%です。
一方、法人の実質的な税率は最大で33%付近です。
個人側の所得が増えすぎた結果、社会保険料を抑えた以上に税金がかかってしまい、かえって手残りが少なくなる場合もあります。
そのため、個人の税率が33%を超えてしまうラインまで所得が増えたら、単純に法人側で事業を一本化した方がいいでしょう。
シミュレーションも必要でなかなか大変ですが、おすすめの方法なのでぜひ挑戦してみてください。