借り上げ社宅とは、会社が契約した賃貸物件を役員や従業員に貸し出す社宅制度です。
借り上げる住宅には決まりがなく、アパートやマンションのような集合住宅や一軒家の場合もあります。
社宅と聞くと決められたところで生活しなければいけないと思うかもしれません。
しかし、最近では従業員の希望する住宅を会社が借りれることが多いので、住む場所を自由に選べます。
生活費の中で住宅費が占める割合は小さくありません。
社宅は会社が住居を提供し、その費用の一部もしくは全部を負担する制度ですから、従業員の満足度が高い福利厚生として知られています。
この記事では借り上げ社宅を使うことでどのようなメリットがあるのかを解説します。
役員に貸す場合
役員が自宅を借りる場合、「個人で借りるか」「会社で借りるか」を選択できます。
会社名義で借りて役員が住む場合、役員は会社に家賃を支払う必要があります。
いくらの家賃を支払えばよいのかは、住宅の広さによって異なりますので注意が必要です。
小規模住宅の賃貸料相当額
小規模住宅とは床面積が99㎡( 法定耐用年数が30年以下 は132㎡)以下です。
約60畳ほどになります。
この場合の社宅家賃月額は次の①~③の合計額です。
- 家屋固定資産税課税標準×0.2%
- 土地固定資産税課税標準×0.22%
- 家屋床面積坪当たり12円
この計算を行うと、一般的な相場の20%ほどの金額になります。
小規模住宅以外の賃貸料相当額
この場合の社宅家賃月額は次の①~②の合計額です。
- 家屋固定資産税課税標準×10%(木造は12%)×1/12
- 土地固定資産税課税標準×6%×1/12
この計算を行うと、一般的な相場の25%~30%ほどの金額になります。
豪華社宅の賃貸料相当額
豪華社宅は床面積が240平方メートルを超えるもののうち、取得価額、支払賃貸料の額、内外装の状況等各種の要素を総合的に勘案して判定します。
床面積が240平方メートル以下のものであっても、プールなどの設備や個人の趣味・思考を著しく反映した設備等を有する場合は豪華社宅に該当することとなります。
この場合、一般的な相場と同等の金額になります。
節税メリット
例えば、月額家賃が20万円の小規模住宅を会社名義で借りて、役員が住んだ場合、本人の負担は4万円程度で済みます。
この4万円は「賃貸料相当額」と言われ、役員の場合、賃貸料相当額を払っている限り、給与として課税されることはありません。
差額の16万円に対して課税がなく、さらに会社側は経費とすることができるので、役員が自宅を借りる場合は会社名義の方が圧倒的に有利となります。
<全体のイメージ図>

賃貸料相当額の計算
賃貸料相当額の計算には固定資産税評価額が必要ですが、その明細は不動産を所有している大家さんのところに直接届きます。
そのため、借りる側では通常は確認することができません。
ただ、賃借人であっても 固定資産税課税台帳を閲覧する権利があるため、賃貸借契約書などを市役所等に持参すれば閲覧することができます。
その他にも、不動産会社に社宅家賃を算定したいことを伝えれば対応してくれるでしょう。
従業員に貸す場合
従業員に貸す場合は、「賃貸料相当額の半額」「小規模住宅の算定式」でよいことになっています。
例えば、月額家賃が20万円の小規模住宅であれば本人の負担は2万円程度で済むということになります。
住居費の負担は大きいので、これを会社が負担するということは従業員にとってはメリットが大きいです。
会社にとっては金銭的な負担はあるものの、強力な福利厚生によって、良い人材を雇用がしやすくなるといったトータルではメリットがある場合が多いです。
なお、従業員が個人で賃貸契約をして住宅手当を支払った場合、従業員の給与となります。
一方、借り上げ社宅の制度を利用すれば従業員の給与とならないので、所得税や住民税、社会保険料も少なくなり、従業員の手取額が増えます。